行政書士田中建太郎が生まれるまで⑩
ということで、浅間山に向かって重たいザックを背負い、校歌や軍歌を歌いながら山を登ります。
途中で、重たいザックを下ろし、小さなリュックサックに持ち替えて、小山をハイキングする企画がありました。
昼ご飯は小山の山頂で行うとのこと。
各自が重たいザックから解放されて、小さなリュックサックにそれぞれの担当の持ち物を入れ替えていきます。
私の担当は、昼食用の食器。
アルマイトかなんかの非常に軽い食器です。
いままでは水やらテントやら寝袋やらで40キロほどの荷重が肩腰に係っておりましたが、アルマイトの食器なんて羽が生えたみたいに体が軽いです。
これはらくちんと鼻歌まじりに小山を登っていきます。
20分ほどの山登りの末ついに小山の山頂に到着!
さあ小山の頂上の見晴らしのいいところでみんなが楽しみにしているお昼ご飯です。
私は担当の食器をだして、わくわくしていると、私の所属する班の班長である、4年生がこう言います。
「田中、食器と昼ご飯出してくれ」
私はキョトンとして、「昼ご飯?私の担当は食器じゃなかったですか?」と答えますと先輩は
「え?マジで言ってんの?食器と昼ご飯を運ぶ担当だろうが。食器だけなんて軽すぎるだろ、みんな重たい水とかそれぞれ持ってるんだぞ!」
と私のリュックサックの中身を確認します。
私は私で、各自の担当が記載してある旅のしおりを確認してみますと、1日目、小山ハイキング、食器担当:田中、昼食担当:田中と書いてあります。
そうです。私は食器担当:田中だけ読んでしまって、そのあとを読み落としてしまったんですね。
「すいません、お昼ご飯忘れました・・・・・・。」とみんなに謝るも、苦しい登山で唯一の楽しみがごはんです。
その唯一の楽しみを奪われたみんなは、なんともいえない空気をかもしだしてきます。
班長は言いました。
「過ぎたことは仕方ない。この小山を降りてから食べよう」と他の班のみなが美味しそうに昼食を食べている中、先に小山を下山します。
登りは荷物も軽くてウキウキでしたが、下りの道はもう針の筵。居心地の悪さがたまりません。
たかだか20分の距離でしたが、重苦しい空気に押しつぶされそうになった20分でした。
明日に続く。