1種旅行業とは、国内海外の募集型企画旅行の取扱を含め全ての旅行を取扱える旅行業者を言います。取扱う業務の範囲が多いため、営業保証金や基準資産額などの財産要件が一番厳しいものです。

1.業務の範囲は?

 第1種旅行業登録業者はすべての旅行業務が執り行えます。

具体的には

①海外への募集型企画旅行

②国内への募集型企画旅行

③受注型企画旅行

④手配旅行

です。

2.1種旅行業登録の許可要件

①下記の登録拒否要件に抵触していないことが必要です。

⑴ 旅行業法第19条の規定により旅行業若しくは旅行業者代理業の登録を取り消され、又は第37条の規定により旅行サービス手配業の登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者(当該登録を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内に当該 法人の役員であった者で、当該取消しの日から5年を経過していないものを含む。)

⑵ 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者

⑶ 暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。 )

⑷ 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者

⑸ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記⑴から⑷のいずれかに該当するもの

⑹ 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ないもの

⑺ 法人であって、その役員のうちに上記⑴から⑷又は⑹のいずれかに該当するもの

⑻ 暴力団員等がその事業活動を支配する者

⑼ 営業所ごとに旅行業法第11条の2の規定による旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者※1

⑽ 旅行業を営もうとする者であって、当該事業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しないもの ※2

 

②旅行業務取扱管理者の選任をすること

上記①の(9)にもあるとおり、第1種旅行業登録の人的要件としては、旅行業に携わる従業員数10名までは1名以上、11名からは2名以上の、常勤かつ専任の総合旅行業務取扱管理者を選任する必要があります。(国内旅行業務取扱管理者は不可)

③財産要件としては、営業保証金を少なくとも7000万円供託すること(協会加入する場合には1400万円の弁済業務保証金分担金を協会に預託できること)と、基準資産額が3000万円以上必要になります。

基準資産額の計算方法は、直近の決算期の確定申告書の中にある貸借対照表をもとに計算します。

基準資産額={(資産の総額)-(創業費その他の繰延資産) -(営業権)-(不良債権)} -(負債の総額)-(所要の営業保証金又は弁済業務保証金分担金)

 

1種旅行業登録の場合には基準資産額が3000万円以上必要で、協会加入する場合の弁済業務保証金分担金が1400万円からなので、

 

3000万円≦{(資産の総額)-(創業費その他の繰延資産) -(営業権)-(不良債権)} -(負債の総額)-1400万円

という計算式が成り立ちます。ということは

{(資産の総額)-(創業費その他の繰延資産) -(営業権)-(不良債権)} -(負債の総額)≧4400万円

となります。

会計に詳しい人は当然ですが上記の計算式の中で資産総額から負債総額を引いた金額は必ず貸借対照表の右下にある純資産額になりますので、(資産総額負債総額=純資産額)

(純資産の額)-(創業費その他の繰延資産) -(営業権)-(不良債権)≧4400万円

が成り立てば要件はクリアすると考えていいでしょう。

よくある勘違いとしては、資本金が5000万円あるから大丈夫ですよね?と聞かれることもあるのですが、資本金はあくまで純資産額のうちの一部であり、繰越利益剰余金が―1000万円である場合には純資産額は4000万円となり財産要件はクリアできません。また不良債権とみなされる実体のない資産が計上されている場合にも差し引かなければなりません。財産要件を満たしているかどうかは貸借対照表の内容及びそれにともなう勘定科目内訳明細書や売掛金や未収金の実態のわかる契約書など精査してみないと正確な判断をすることはできません。

また20184月より税理士又は公認会計士による「手続き実施結果報告書」も作成しておく必要があります。粉飾決算により破たんし社会問題となった第1種旅行業登録事業者の事件を受けて法改正がなされ、粉飾決算をしていない旨の証明書が必要になりました。

④営業所として、他法人と同居していないか、自宅と渾然一体でないかなど、旅行業の事務所として独立して営業できる営業所を備えておかねばなりません。

⑤法人の場合には、定款や履歴事項全部証明書の事業目的に「旅行業法に基づく旅行業」という文言がないといけません。

 

3.1種旅行業登録の申請先

1種旅行業登録は観光庁長官の管轄です。申請先は地方運輸局になりますが、第2種や第3種からの変更登録の場合を除き、新規に旅行業登録をするにあたりいきなり第1種旅行業登録を申請する場合には観光庁の担当者に事前相談をする必要があります。

 

4.1種旅行業登録の時間的な目安

新規に第1種旅行業登録は地方運輸局に申請する場合には登録通知が手元に届くまでおよそ60日ほどです。

2種や第3種からの変更登録申請ではもっと早く登録通知が手元に届くケースが多いようです。

とはいえあくまで観光庁内部の事情次第ですので余裕をもって申請をしたほうがよいでしょう。

 

5.1種旅行業登録の費用的な目安

当事務所の報酬額表では、第1種旅行業登録申請の手数料は25万円+消費税となっております。

当事務所で行う第1種旅行業登録申請の内容は「旅行業登録申請のためのヒアリングから登録要件の調査、観光庁との事前相談代行や提出書類の収集作成、申請書の提出代行、登録通知書の受領代行、旅行業協会への入会手続きの代行」など多岐にわたりますが交通費などもすべて含まれておりますので追加費用はありません。

また登録時に登録免許税として9万円が必要になります。

ただし定款を変更する必要があるなどの場合は別途費用が発生しますし、内容によって難易度が高い場合には25万円以上の御見積書を作成することがありますのでご相談ください。